学びにゆきます
実家を離れた私立大学への進学が決まったとき、当時私は半泣きになりながら両親に頭を下げたことをよく覚えています。当時うちはとても裕福とはいえない状況で、私はお金ばっかりかかる自分を生まれて初めて心の底から恥じたのでした。
父は「こどもが金の心配なぞするんじゃない」と私を叱りました。んなこと言われても、心配になるような暮らしぶりじゃないか、と私は逆にカチンときました。最初は私が頭をさげただけだったのに、そのうち喧嘩にまで発展したわけです。おかしな親子ですね。
その夜、母が私にそっと耳打ちしました。「お金のことは大丈夫よ」と。「どこからそんなお金が出てくるというの?」私は聞きました。
「お父さんちゃんと保険いれてるから、そこからおりてくるの」
「保険で進学のお金なんてでてこないよ」
「おバカ。学資保険に入ってるの」
私は、学資保険ということばを初めて聞きました。
「あんたに好きなだけ勉強させてやりたいのよ。がんばってらっしゃい」
学資保険というのは、両親に何かあり、こどもが学校に通うお金を用意するのが難しくなったときや、お金の問題で進学が困難になったときのために、こつこつと積み立てておく保険をいうのだそうです。
「お父さん心配性だからね。いろいろ用意してんのよ。だから心配しなくていいのよ。もっとずっと前から、お父さんはあんたの倍、心配ばっかしてんだから」
私は今、実家を離れて東京で独り暮らしをしながら、四年制の大学に通っています。専門教科を思い切り学ぶという楽しみを、かみしめています。